O2Oの先、OMOはどう生まれたか?発案者、李開復の語るAIとの関連性とは – 世界の流れとXD 第2章(2/3)

シリーズ: 世界の流れとエクスペリエンスデザイン
– デジタルオーバーラッピング、OMO、バリュージャーニー カタカナまみれの世界観 –

このシリーズは、ビービットが拠点を持つ中国をはじめ、世界から集めたトレンドをまとめた結果出てきた「ビービット独自の視点と切り口」を、今の日本のビジネスを背負って立つ皆様にお伝えするものです。

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第2章 ビジネス編:OMO型ビジネスとは
2-2 O2Oの先、OMOはどう生まれたか?発案者、李開復の語るAIとの関連性とは

  1. OMOの本当の意味、現状、日本での使われ方
  2. AIとの深い関連性

前回は、OMO、つまりOnline Merges with Offlineの基本的な考え方を、中国の最先端企業の実際の言葉を使ってご説明しました。今回はこの言葉がどのように生まれたか、どのように定義づけられているのかという基礎情報をご説明したいと思います。

OMOの本当の意味、現状、日本での使われ方

本サイトの用語集でもご説明している通りですが、OMOとは2017年9月頃に、元GoogleチャイナのCEO、現在シノベーションベンチャーズを率いる李開復(リ カイフ)が提唱し始めた言葉で、特に2017年12月のザ・エコノミスト誌にて広く発表されました。

李開復氏

李開復は、オンラインとオフラインが融合した社会のことをOMOと呼んでおり、「ソファに座って口頭でフードデリバリーを注文することや、家の冷蔵庫がミルクが足りないことを察知してショッピングカートへの追加をサジェストすることは、もはやオンラインでもオフラインでもない。この融合された環境をOMOと言い、ピュアなECからO2Oに変わった世界を更に進化させた次のステップである」とその著書で述べています。

事例としてシェアリング自転車やタクシー配車、デリバリーフードなどを使いながら、OMOの発生条件として、李開復は4つのことを挙げています。

  1. モバイルネットワークの普及。いつでもどこでもデータを取得でき、我々に偏在的な接続性をもたらす。
  2. モバイル決済浸透率の上昇。モバイル決済は少額でもどんな場所でも利用が可能になる。
  3. 幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り、偏在すること。現実世界の動作をリアルタイムでデジタル化し、活用が可能になる。
  4. 自動化されたロボット、人工知能の普及。最終的には物流(サプライチェーンプロセス)も自動化することが可能になる。

これらが合わさると、リアルチャネルであってもオンラインで常時接続し、その場でデータが処理されてインタラクションすることが可能になるため、オンラインとオフラインの境界は曖昧になり、融合していく、と述べています。

さて、ここでちょっと面白いことを言いますと…

中国ではもう、OMOという言葉は使われていません。何故なら、フィンテック企業の中にフィンテック部門がないのと同様で、もう「当たり前の現状・ルール」だからです。

前回も述べた通り、我々がこの言葉を知ったのは、2017年12月の企業訪問時、直接中国企業からでした。以来、セミナーや資料配布、対面のトークなどを通して、2018年はとにかくOMOを喧伝してきまして、今では1か月に3件ほど、ビービットではないところでOMOが語られているコンテンツを発見できます。ですが、中国では、大体2018年の2月頃を最後に、ほとんど誰も使わない言葉になっています。

では何故今日本で注目されるのか、何故ビービットもこの話をし続けているのか。それは、日本企業に欠けている考え方であり、アフターデジタル社会を生き抜く必要不可欠な術だからです。

オフラインがなくなり、アフターデジタル社会になった中国では、「オンラインが起点でありベースである」「リアルチャネルを、より深くコミュニケーションできる貴重な場とする」ということは当たり前だと思われていますが、日本企業はまだまだ「リアルで顧客と接点があり、たまにオンラインで会える」といったビフォアデジタル的に捉えています。

すると、言葉の意味が変わってきます。中国では単純に「オンラインとオフラインの融合」と表現できるのですが、日本では「デジタル側の方が土台になっている」という前提条件がなく、デジタル接点が少ないため、オンラインとオフラインの融合と直訳してしまった場合、「今あるオフラインを軸に、オンラインをくっつければよい」と考えてしまいがちなのです。

だからこそ、日本にはこの考え方が必要であり、かつ意味としても、「オンラインとオフラインは融合してボーダレスになり、どこでもオンライン化した状態になるため、デジタル起点の考え方が必要」という意味合いで理解される必要があるのです。

上海の”Nike – The house of innovation 001”。デジタル起点になるとともに、逆にレア接点となるリアルの体験価値も同時に高まっています。写真はその場でスニーカー作れちゃう体験エリア。

AIとの深い関連性

2018年、李開復の書いた「AI Superpowers : China, Silicon Valley, and the New World Order」は、アメリカのアマゾンでベストセラーになりました。この本では、今後AIがどのように人間と協調していき、人間は新たにどのような役割を担っていくのか、そしてその未来はアメリカと中国のどちらがどのようにリードしていくのかという話が展開されています。既にTED Talkでも公開されています。

この本でも当然、OMOが出てくるわけですが、これはAIの4つの波と共に語られます。その4つの波とは以下です。

  1. Internet AI
  2. Business AI
  3. Perception AI
  4. Autonomous AI

初めの2つは至るところで既に起きていますが、3つ目はいわゆるOMOであり、物理世界をデジタライズする世界であるため、中国で最も顕著に起きている状況だと言っています。それぞれどのような説明をしているか、簡単にまとめましょう。

Internet AIは、例えばYoutubeを見続けたり、Amazonが自分の欲しいものを事前に知っていたりするというインターネット上の行動予測AIを指しています。巨大ネット企業がこのデータを支配していて、このデータは基本的に「買った・買わなかった」「クリックした・していない」「ビデオを最後まで見た・途中で変えた」といった行動ラベルが貼られて初めて意味を為しています。

「インターネットがより良く進化し、それを享受できる」と幸福な側面を捉えることもできますが、一方で我々の行動が学ばれ、予測され、より巨大ネット企業が儲かる方向に誘導されているという見方をすることもできる、と述べています。

Business AIは、企業体がビジネスを行うにあたって使用するデータを最適処理、予測するAIを指します。伝統型企業も過去数十年のデータを使ってラベリングし、活用可能になります。例えば保険会社は事故や詐欺をカバーし続けてきましたし、銀行はローンを発行し、返済率計算をし続けてきました。こうした業務に対してAIを使用することで、人の目や脳で捉えられない隠れた相関性を掘り下げ、予測が可能になります。

当然、IBMをはじめとして、伝統型企業向けにこのBusinessAIを支援するためのビジネスが成立していて、特にこの領域ではアメリカがリードしていると言えますし、同時に中国のBtoB向けサービスの弱さも示していると述べています。お金を生むためだけでなく、例えば医療の診断などへの活用や、裁判員に対する公正なジャッジなどが可能であり、人的リソースのボトルネックが大きい分野への活用が期待される分野です。

Perception AIは第3の波で、これがOMOやアフターデジタル社会を支えます。

AIが生まれる前、機械は目も見えず、耳も聞こえず、人間がインプットする情報を解析するに留まっていました。Perception AIの登場によって、AIが自ら意味のあるグルーピングを行なったり、対象を認識したり、言葉やフレーズを拾い上げたりするようになっていったと言えるでしょう。第3の波の本当の効果は、我々の生活環境に拡張され、センサーやスマートデバイスの増殖を通して、我々を取り囲む物理世界をもデジタライズすることにあります

元々はPCというあまりに限られた接点からしかインタラクションが得られなかったわけですが、Perception AIにより、顔や声や外部環境を認識することで、オンライン、オフラインをまたがる超大量のシームレスな接点が生まれることになったと言えます。これによりショッピングモール、生鮮食品店、街や家をどんどんOMO環境にしていくだろう、と李開復は述べています。

中国No.2 ECであるJD.comのスマートホーム。冷蔵庫の在庫から、必要なもののレコメンドもしてくれる。

例に挙げているのは中国のケンタッキーフライドチキンにある顔認証。
同社はアリペイと協力した顔認証支払いを行っていますが、写真などを使わず本人がその場に立っているかどうかを確認するため、その画像が生きた対象かを確認する処理まで行っていると言います。過去の様々な購入歴や、家族の好み、冷蔵庫の状況を統合的に見て、我々とコミュニケーションをするようになるのにも、そう時間がかからないでしょう。

Perception AIはハードウェアの重要性が高く、病院や車やキッチンなどがOMO環境に入り込むため、センサーや金型成形エンジニアリング、少量生産の可能な工場など、強力かつフレキシブルな製造エコシステムが必要になり、深センはこういった面で多大な役割を果たしています。その意味で、データ活用の許容性だけでなく、ハードウェアの実験可能性においても中国がリードしていると言えるわけです。

今回の本題はこの第3の波にあるOMOなわけですが、最後のAutonomous AIも補足しておくと、AI自体が認知を行うようになり、機械に適用されるようになると、単なる「自動化」ではなく、「自律化」が可能になる「自律機械の世界」が第4の波である、と李開復は言っています。例えば、熟れたイチゴを判別して摘むことができるようなものを自律機械といいます。

単一の業界レベルでは既に事例もありますが、農業~ロジスティクス~販売や自動運転などを統合的に実現するには、データ量に加えてより公的な取り組みが必要であると述べています。

以上、今回は李開復の原典を辿り、OMOという考え方と、データやAIの結びつきを解説してきました。OMOは単なるO2Oの次のマーケティングの考え方ではなく、AIを伴った社会システムのアップデートであり、その意味では、より広い現象として世界中で起きうることであることが伝わればと思います。

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