OMOとは? アフターデジタル時代の新ビジネスルール – 世界の流れとXD 第2章(1/4)

シリーズ: 世界の流れとエクスペリエンスデザイン
– デジタルオーバーラッピング、OMO、バリュージャーニー カタカナまみれの世界観 –

このシリーズは、ビービットが拠点を持つ中国をはじめ、世界から集めたトレンドをまとめた結果出てきた「ビービット独自の視点と切り口」を、今の日本のビジネスを背負って立つ皆様にお伝えするものです。

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第2章 ビジネス編:OMO型ビジネスとは
2-1 OMOとは? アフターデジタル時代の新ビジネスルール

  1. アフターデジタルを捉えないと生き残れない
  2. Online Merges with Offline
  3. 通底する「顧客視点」「体験中心の融通無碍さ」
  4. 行動データを何に使うべきか

これまで、中国のデジタル先進事例を中心に、あらゆる行動がデータ化され、それによってビジネス原理が大きく変わることをご説明してきました。第2章では、そんな時代に企業が成功するためにどのように考えていくべきなのかをお話しします。

アフターデジタルを捉えないと生き残れない

第一章をサマライズすると、「もはやオフラインがなくなるのだから、全てがオンラインであることを前提とすべき」ということになります。これを当たり前として捉える世界の見方を、アフターデジタルと呼んでいます。

オンラインが全てを覆うので、デジタルはもちろん、以下の右側のように、リアル接点でも全て、行動データが取れるオンライン接点になります。顧客データも在庫もモノづくりも行動ログも、全てがつながっていて当たり前の世界になり、リアルをひっくるめた行動データを活用できる企業が優位性を持つことになります。

after digital

これ、かなり口酸っぱく何回も言っているのですが、それには理由があります。

それは、日本の大企業・モノ作り企業はその品質の高さ故、どうしてもリアル起点で考えてしまい、デジタルはあくまで付加価値的に活用しようとしてしまうためです。

大きな企業ほど、このようにビジネスをデジタル起点に移し替えることが難しく、時間とお金がかかることは重々理解をした上で、少なくとも「視点を変える」必要があるのではないでしょうか。既に所持しているオフラインアセットに固執するがあまり、本当の意味で、デジタル起点のビジネスにトランスフォームすることができないケースが多くみられます。

もちろん、リアルの接点を持っていることは、アフターデジタルであっても非常に強いアセットになり得ます。アフターデジタルの世界では、常時接続でずっと顧客とつながっている中で、むしろリアル接点の方が「密にコミュニケーションが取れる貴重な接点」という位置づけになるのです。

例えばアフターデジタルに対応している大規模保険会社の平安保険グループは、営業マンを増やしています。これは、平安グループの経済圏に乗ってもらう(オンボードしてもらう)には、データから顧客行動を把握した上で、人によるコミュニケーションで信頼醸成するのが一番だと知っているからです。

中国平安保険グループの本社

Online Merges with Offline

さて、この世界を前提にした時に、企業が勝つために必要な考え方があります。それを、OMO(Online Merges with Offline)と呼んでいます(Online-merge-offlineと言う場合もあります)。

元Google中国のトップで現在Sinovation venturesという会社を持つ李開復(リ カイフ)が言い始めた言葉です。この考え方は、「すでにオンラインとオフラインは融合しているため、オンオフと言うチャネルで分けた考え方ではなく、全てをオンライン起点、オンラインのビジネス原理で考える」というものであると、我々は捉えています。

李開復の最新の著書「AI Superpowers」では、溶け合って融合した世界のことを指してOnline-Merge-Offlineと呼んでいますが、2017年9月頃に言い始めたときは、先端企業はこのOMOの観点を持ってビジネスを組み立てている、という観点で書かれており、日本に強く必要だと思われるこの観点を指して、ビービットでは当時彼が使っていたOnline Merges with Offlineというフレーズを引用しています。

ではもっと具体的に、OMOという考え方でビジネスをするとは一体どういうことなのでしょうか。

通底している「顧客視点」「体験中心の融通無碍さ」

OMO型企業の考え方を表す良い例として、私が初めてOMOの話を聞いた時のお話をします。2017年11月末に、中国のビットオート(BitAuto, 易車)というカーメディア企業に訪問した時のことでした。当時、この企業が影響力はまだ強くないが注目されているという話を聞き、日本のカーメーカーの方と一緒に訪問し、ディスカッションを行いました。

この時、彼らの会社紹介は非常に示唆的でした。

以下の図を見せながら、「我々のやりたいことはこれです。」と言うのです。

「免許を取る、車を買う、車を使う、車を売る、そしてまた買うプロセスに戻る、これを我々は顧客中心のカーライフサイクルと呼んでいます。このカーライフサイクルの全てをデータで明らかにし、それによって、より顧客中心のカーライフを提供することが我々の使命です。そのために、この図に書いているアイコンのように様々な企業と投資や提携を行っています。」

カーメディアと思って訪問したのですが、非常に大きな絵を描いていました。データを押さえてカーライフ・インフラになるというのです。

この時に我々から一つ質問をしました。

「御社はオンラインの企業なのに、今は実店舗を持っていて、メンテナンス品を売ったり、toC向けのコンサルをしたりしていますよね。オンラインの企業が、何故そのようなオフラインチャネルの店を出すのでしょう。O2O戦略があれば具体的に聞かせてください。」

すると、ビットオートの人は少し困った顔をしてこう答えます。

「うーん、オンラインとか、オフラインとか、そういう風に分けて考えていないんですよ…そもそもそういうチャネルで分けた考え方って、すごく企業目線ですよね?今の時代は、OMOともいわれるように、オンラインとオフラインは既に溶け合って違いはなくなりつつある、と考えるのが当たり前なんですよ。」

なんだかすごいことを言っているぞ…!と思ったのですが、その時は実はあまりよく分かっていませんでした。

しかしその直後、中国のBtoC向けECでシェア第2位のJD.com(京東)の無人コンビニ担当のトップに会いに行った時に更なる衝撃を受けました。ここでもまったく同じ「何故オンライン企業が無人コンビニも出すんですか?」という質問をしたとき、以下のように回答されたのです。

「オンライン、オフラインとチャネルで分けるのは、企業目線の考え方だと思うんです。ユーザはその時一番便利な方法で選びたいだけなんです。水をECで箱買いしていても、のどが乾いたらコンビニで買いたい。オンラインとオフラインはもはや融合しているので、その選択肢を広く提供することが、より幅広く価値提供するために重要だと思っています。

そもそも、我々にとって無人コンビニはただのUIで、モバイルやPCと同じなんですよ。無人コンビニでは、個人が認証されて買い物をするわけですから、購買データやその人の挙動は全てIDにつながって獲得できるわけですよね。それってモバイルやPCで買い物するのと、何か変わりますか?」

これはさすがに衝撃的でした。

彼らにとっては、モバイルで注文したユーザに水を届けるのも、コンビニでユーザが買った分の補充をするのも、行動データが取れるんだったら同じだ、というわけです。「中国ではもうこれが当たり前だよ」と。

(京東ではないが)無人コンビニの店舗

行動データを何に使うべきか

少し戻って、もう一つ、BitAutoに質問したことがありました。同行した日本のカーメーカーの方がこんなことを聞いたのです。

「あなたたちが描いている、このカーライフ全体の支援ですが、実は我々も同じようなことを考えていて、色んなサービスと提携しています。そうなると、我々とBitAutoさんは、これから協力していくのでしょうか?競争していくのでしょうか?」

この突っ込んだ質問に対して、BitAutoの戦略部門トップの方は、笑顔でこう答えました。

「そうですね、今は中国の自動車業界はまだ成長期なので、協力して一緒に盛り上げていきたいと思っています。でも、ゆくゆくはパワーゲームの競争になることは十分にあり得るでしょうね。

その時の勝ち筋を、我々は見出して既に手を打っているつもりです。勝負を分けるのは、高頻度の行動や、少額の取引によって、どれだけ多くタッチポイントを獲得できるかだと思っています。」

自動車という、低頻度、高価格のモノづくりをしている質問者は凍り付きます。さらにこのように続きました。

「何故、多くのタッチポイントが必要かというと、当然、活用可能な多くのデータが集まるからなのですが、このデータの使い方が重要です。こうした行動データは、アップセルに使ったり、効率化に使ったりしているだけでは、競争に勝てません。とにかくこの行動データをプロダクトとUXの改善に使い、それを最も高速で改善できた企業が勝つのです。

我々は現在、約7割のカーメーカー・ディーラーに対して、データを活用したコンサルティングを行っています。なので、あなたの会社もうちのデータを使って、より顧客の生活にあった自動車を作ってもらえれば、これは協力関係と言えるんじゃないでしょうか?」

ウェブの世界では、高速PDCAやABテストなどといった言葉があるし、実行している企業は多いと思います。彼らが言うのは、もはやオフラインなんか存在しないんだから、リアルの行動もデータ化して活用できるし、それを使って自動車や店や人の対応も、高速PDCAすべきだと言っているわけです。恐るべし、OMO。

さて、最後にOMOにおけるポイントをまとめると、オンラインとオフラインを区別しないことによって以下のようなビジネスが当たり前になる、と言えると思います。

  • 従来のオフライン行動も、モバイル、センサー、IoTから行動データが獲得可能
  • 全てオンライン化すると、チャネルの区別がなくなり、選び方が融通無碍になるべき
  • 人に好きになってもらって初めて使える行動データが貯まるので、リアル接点であっても高速PDCAし、プロダクトとUXを改善しつづけるべき

これを踏まえて、是非、以前私が書いた「コーヒー大戦争 -スタバの中国売上にみるOMO型ゲームチェンジ」を読んでみてください。如何にしてこのOMOという考え方が脅威になるか、よく分かっていただけると思います。

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