RPG的ビジネスシステムが拡張するデジタル日常生活 – 世界の流れとXD 第1章(4/4)

シリーズ: 世界の流れとエクスペリエンスデザイン
– デジタルオーバーラッピング、OMO、バリュージャーニー カタカナまみれの世界観 –

このシリーズは、ビービットが拠点を持つ中国をはじめ、世界から集めたトレンドをまとめた結果出てきた「ビービット独自の視点と切り口」を、今の日本のビジネスを背負って立つ皆様にお伝えするものです。

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第1章 生活編:デジタルオーバーラッピング
1-4 行動データの活用が社会とUXを変えていく

  1. スライム倒して経験値2、みたいな世界
  2. RPG的な世界観のUX活用という示唆

前回は、信用度を可視化し、ユーザとビジネスの双方に正しいインセンティブ設計を行うことで、より良いUXを実現できる、という話をしました。

実はもう一つ、デジタルオーバーラッピングを前提に、さらにUXを改善できるコツがあります。本日はそのお話をいたしましょう。

スライム倒して経験値2、みたいな世界

前回、同じタクシー配車サービスにおいて「私がUberよりDidiの方がすごいと思っている理由」について説明しました。以下再掲です。

人に頼らず、ドライバー専用アプリから取得できるデータによる評価を加えたことが、非常に秀逸と言えます。

  • 早く配車リクエストに答えたか
  • 早く客をピックアップできたか
  • 適正なスピードで正しいルートで送り届けられたか

運転中に専用アプリを開くことを義務付け、上記のような「タクシー体験の満足度に関わる、速度と安全性」のデータを取って評価に使っているわけです。

結果、Didiの示すルール通りに頑張れば、給料が上がり、社会的信頼まで得られるため、街中にある普通のタクシーとは全く異なるサービス品質を獲得し、業界に大きなディスラプションを起こし、モバイルユーザのうち約40%の人が使うサービスになっています。

さて、この第一章では一貫して、「オフラインが存在しなくなり、あらゆる行動がオンラインデータ化して個人IDに紐づく」というデジタルオーバーラッピングおよびアフターデジタルの世界を前提にしており、日本にもこれはすぐに訪れる(もう半ば訪れている)と言っています。

このアフターデジタルの世界観において成功しているビジネスの多くは、共通点があります。それは「ゲーム的にインセンティブ獲得が設計されている」という点です。

私はドラゴンクエストが大好きですが、いつも思っていたことがあります。

「スライム倒した時の経験値が分かったり、あといくつでレベル上がるか分かったり、毒の沼地を歩くと歩数に応じて一律にダメージを受けたり、ゲームって全部可視化されていて楽な世界だな…」

しかし、Didiの例を見ると、もうこういうRPGの世界が現実になっているよなと思います。

Didiのドライバー専用アプリはもはや、リアルワールドに存在するAR型オンラインRPGと言えるし、ポケモンGoでお金が稼げるようなものだな、と思います。

  • 都度スコアリングされて経験値が貯まる。
  • グレードアップの昇格試験でレベルを上げる。
  • アプリ内のマップ情報には宿屋(ガソリンスタンド、EVスタンドやトイレ)が表示される。
  • 運転中の出来事をシェアして他の人と盛り上がれる。
※Didiのドライバー用アプリの画面。右は、車内でも出来る体操の動画。

日本で広まりつつあるUberEatsも、ドライバーのための「攻略サイト」みたいなものがあり、みんなそれを利用してコツを覚えたりするそうです(例えばこんなサイトがあります)。

中国で人気のあるフードデリバリーサービスも、アプリでドライバーの動きを見ていると面白いことに気が付きます。

自分の家から100mの凄く近いところにいるのに、もう一度開くとすごく遠くに行っていたりして、ウロウロ色んな所を走り回っているのです。一つ一つの配達に時間制限があるので、彼らはそれを複数案件同時に走らせており、つまりは「いくつ案件を掛け持ちして、一時間以内にいくら稼げるか」というリアルマップを使ったお金儲けゲームをやっているわけです。

健康促進や運動系のアプリも、同様の楽しさがありますよね。例えばVitalityプログラムという保険サービスも同じ。歩数やランニングの距離など、ゲーム的にタスクが与えられ、それが達成すると例えばスターバックスの一杯無料券がリワードとしてもらえたり、「健康になった」と評価されることで加入している保険の保険料が安くなったりします。

全てが可視化されるから、頑張りが分かりやすくスコアで確認できて、何かしらの報酬がある。デジタルがリアルをオーバーラップしているので、全てはデジタル世界からリアル世界を眺めるようなものになっていくのではないでしょうか。

RPG的な世界観の活用という示唆

アフターデジタルのエクスペリエンスデザインを考える上で、非常に重要な示唆が2つあります。

一つ目は「可視化された行動データをどう使うのか」です。

これまで可視化できなかったことが可視化できるようになると、人は単純に「面白い」と感じます。この「面白い」を単発で終わらせることなく、継続的に提供し、かつリアルの世界で使えるインセンティブにすることで、ただのゲームではない、「実世界とコネクトしたエクスペリエンス」を提供することができます。

従来のゲーミフィケーションとは異なり、元々オフライン行動だったデータを活用してインセンティブとつなげるので、行動を促すことができます。

二つ目は、このゲーム的感覚を「ビジネス側に活用するという視点を持つこと」です。
当たり前ですが、ユーザ側とビジネス側では、望んでいるインセンティブは全く異なります。ユーザ側はより快適で、便利で、楽しい体験を望んでいますし、ビジネス側はより儲かったり、よりコストやプロセスが軽減されたりする仕組みを望んでいます。

RPG的、AR的な世界観は、何もユーザ側だけに提供するものではありません。むしろ型が決まっていてインセンティブが分かりやすいビジネス側の方が、方向づけしやすいケースが多いと言えます。

ユーザ体験の質を高めることを最終ゴールに置いた上で、そのためにはどうやってビジネスプロセスを組めばいいのかを考えると、単なる使いやすさや便利さに留まらない圧倒的な体験の提供が可能になるということを、こうした事例は示していると思います。

※Whisky Liveというウィスキーの祭典に来ているのにVRに没頭する上海駐在員

オンラインとオフラインが融合する世界は、まさに拡張現実。

だからこそ我々ビービットは、これからはエクスペリエンスデザインの時代だと思っていますし、これが当たり前になれば、今よりもっと楽しい日常が訪れるな、とワクワクしています。

シリーズ: 世界の流れとエクスペリエンスデザイン
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