オフラインはもはや存在しない – 世界の流れとXD 第1章(1/4)

シリーズ: 世界の流れとエクスペリエンスデザイン
– デジタルオーバーラッピング、OMO、バリュージャーニー カタカナまみれの世界観 –

このシリーズは、ビービットが拠点を持つ中国をはじめ、世界から集めたトレンドをまとめた結果出てきた「ビービット独自の視点と切り口」を、今の日本のビジネスを背負って立つ皆様にお伝えするものです。

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第1章 生活編:デジタルオーバーラッピング
1-1 オフラインはもはや存在しない

  1. 国が注目されているのは「全ての行動がオンラインデータ化している」から
  2. モバイルペイメントのおさらい
  3. ペイメントのもたらす、さらなる便利な生活
  4. 無人コンビニの狙いと行動データ

中国が注目されているのは「全ての行動がオンラインデータ化している」から

最近、様々なメディアで中国特集が増え、様々な企業が中国視察を行なっており、いろんな方々がいよいよ中国のデジタル事例に目を向けています。

事例もさることながら、中国の本当の凄さはデジタルオーバーラッピングにあります。オンラインがオフラインに覆いかぶさって浸み込んでしまい、もはやオフラインが存在しないという状態にあるのです。

今までオフラインだった行動、例えばレストランでの支払い、コンビニでよく買うお酒の銘柄、移動手段、良く通る道。そうした情報が全て個人のIDに紐づいたオンラインデータとして統合されていることが、中国のデジタル先進性を作り出しています

ビービットでは、全ての中国デジタル先進事例をこの観点で語る必要があると思っています。その角度で全てを語りなおしてみたいと思います。

モバイルペイメントのおさらい アリペイとWechat Pay

先日、交通カード(日本で言うSuica)にチャージしようとしたら、駅の機械に現金を入れるところがありませんでした。街中のコーヒースタンドで、現金支払いができなかったこともあります。

現金使用率が3%を切ったと言われている中国都市部では、アリペイ(Alipay、支付宝)、WeChat Pay(微信支付)のどちらかのアプリを使って、QRコードを読みとることで会計を済ませています。とある記事では、路上生活者の方もQRコードを掲げているとのこと。なぜなら街中の人が誰も現金を持ち歩いていないからです。

ビービット上海オフィスでは社内でコーヒーが飲めますが、コーヒー豆をあるコンサルタントがまとめて購入し、他の人が飲む時に少額を支払う方法で運用しており、こんな “超マイクロビジネス” でさえQRコードです。はじめは自分で携帯画面のQRコードのキャプチャを印刷しておいていたのですが、しばらくしたら、Alibabaから写真のようなQRコードが家にいきなり届いたそうです…

※上海オフィスのコーヒー用QRコードがこちら。

QRコードだけでなく、割り勘するときは普通にチャット上で、まるでスタンプを送るような感覚でお金を送ります。

確かに、めちゃくちゃ便利です。
日本に帰ると、私はお金をおろすのを忘れたり、小銭を管理することにうんざりしたりしますし、お店側も、いちいち小銭を用意したり、収支を確認する締め作業とか面倒だろうなと思います。

でも、本質的な変化は、「私の全ての買い物が、オンラインデータとして蓄積されている」ということです。
私がビールを買うのか、それがキリンなのかアサヒなのかサントリーなのかサッポロなのか、どれくらいの頻度でどこで何時に買うのか、全部わかってしまいます。そうすると、企業視点ではターゲットの顧客を特定することも簡単になりますし、金回りがよい支払い能力のある人だということが分かれば、よい融資先であることも分かるため、そこから新たな金融ビジネスも生まれます。

データを取られるのがなんとなく怖い、という人もいます。でも、これだけ便利でメリットがあると、みんな利便性と引き換えに情報を差し出しますし、その会社に対して信頼さえ感じてしまいます。体験の良さと信頼があるから、情報を差し出すことが可能になっています
日本でも普通にSuicaで会計したり、Facebookログインで他のサービスを使ったり、Tポイントカードを出したりしていますよね?実は同じことです。

ペイメントがもたらす、さらなる便利な生活

ビービット上海オフィスでは、ランチの時間、半分のメンバーが「デリバリー」を頼みます。
日本でも出前館やUber Eatsなど、様々なオンラインデリバリーサービスがありますが、中国でメジャーな「アーラマ(饿了么、ウーラマとも)」や「メイトゥアン(美団外売)」は、街中のほとんどのレストランで使えて、ほとんどの人がアプリを入れている、くらいの普及度なので、「当たり前の食事インフラ」になっています。
注文すると、アリペイかWechat Payにつなげられ、ほとんど支払っている感覚がないくらい(指紋認証やFaceIDを挟んでOKするだけ)のスピードで会計が終了します。

移動も同じです。
私は会社から歩いて20分くらいのところに住んでいますが、シェアサイクルを使って出社しています。シェアサイクルの自転車は、イメージとしてはこれくらいあります↓。

街中に、普通に置いてあるシェアサイクルについているQRコードをアプリで読み取ると、シェアサイクルのカギが、触ることなく開きます。好きなところまで乗ると、非常識でない場所であれば好きなところに乗り捨てられます。30分乗って、1元(16~17円)です。

これも、時間帯と頻度から家がどこで会社がどこなのか分かりますし、他の情報と組み合わせれば、どういう店に、どのような流れで寄る人なのかが分かります。キャンペーンやゲームを仕込めば、人の流れを変えることさえできます。

自動車移動も、中国でUberを買収したDidi(滴滴出行、ディディチューシン)をはじめ、様々なサービスがあり、最近は電車も、携帯のQRコードまたはApple Payで入れるので、私の携帯は、私の移動情報を全て知っており、それをクラウド上にアップし続けています。夜どこにいても、Didiを使うと「家に帰るんですよね?ならこの住所ですね。」とサジェストしてくれます。

ここでも、個人の認証を通したペイメントを使うので、やはり同じように全てのデータが「私の行動データ」として貯まっていきます

無人コンビニの狙いと行動データ

ここまでの話では「モバイル×ペイメントが前提」のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。

上海には今、Jian24という無人コンビニがあります。先日、この無人コンビニのCEOとディスカッションをしてきました。

※無人コンビニJian24の入口。専用アプリのバーコードを読んで入場し、好きなものを取ったら、再度バーコードを出口で読ませて出ていくだけ。あとから購入したものが携帯に通知される。

今後無人コンビニをどれだけ展開していくかという質問に対して、彼の答えはこうでした。

「別に無人コンビニで儲けようと思っているのではないんです。我々は店舗に無数のカメラを置いて、購買時の顧客行動を画像認識で取得しています。そこでは、何歳のどんなペルソナの人が、どんな風に迷いながら商品を決めるのか、あらかじめ買うものを決めている人と、そうでない人の違いはどんな行動に現れるのか、逆に行動が変わるときにどのような反応があるのかを全てデータ化して、データベース化しようとしています。
我々が売るのは無人コンビニのモデルや、そこにある商品ではなく、顧客がリアルの店舗で行動するときの、購買行動パターンのデータプラットフォームなんですよ。

当然ここにも、携帯で簡単に支払えるということは関わっています。しかし、人が勝手に買い物の行動データを貯めてくれるラボとして、この無人コンビニは生み出されているのです。その意味では、店員を入れて複雑性を増やしたり、アセットを持って対応することは、余計な要素になるわけです。

全てがオンラインデータ化してオフラインがなくなる、といった意味を、ご理解いただけたでしょうか?

デジタルオーバーラッピングという本質をお伝えしたうえで、次回は「オフラインがなくなった世界では、パーソナライズといった個別ニーズ対応ではなく、もっと大きな社会レベルの変化が起きる」ということを説明したいと思います。


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