シリーズ「After Digitalな世界」第2回:ビジネスは、どう変わる?

デジタル化した世界=After Digitalな世界についてお伝えしているこのシリーズ。第1回は、エストニアのデジタル行政の話から、「デジタル化」の本当の意味について考えました。

2回目となる今回は、After Digitalな世界ではビジネスはどうなるのか、日本よりデジタル化が進んでいる中国で起こっていることをもとに、お話したいと思います。

O2Oはもう古い?これからのキーワードはOMO

前回から、デジタル(=オンライン)とリアル(=オフライン)の話をしているので、「O2O」という言葉を思い出した方もいらっしゃるかもしれません。O2Oとは「Online to Offline」という考え方で、文字通り、「オンラインにいるお客様に、いかにオフラインに来ていただくか」を考えるモデルです。

もう少し具体的に言えば、「ウェブサイト(オンライン)を見てくれているお客様に、いかに店舗(オフライン)に来ていただくか」を考える、というのがよくあるパターンではないでしょうか。

そう、目的地はリアルの店舗なんです。リアルで買っていただくことが目的で、デジタルは、そのための手段。「いかにご来店いただくか」なんて言い方、しますよね。来ていただく、っていうことは、自分はリアル側にいるということです。これは、前回お話したAfter Digitalの逆、いうなればBefore Digitalの考え方だと言えるでしょう。

これに対して、デジタル先進国・中国で最近耳にするのが「OMO」。ビービットも最近セミナーでよくこの言葉を使っているので、聞き覚えのある方もいらっしゃるでしょうか。

OMOは「Online Merges with Offline」の略で、少しやわらかい日本語にすると「オンラインがオフラインと1つになる」。具体的なことは後でお話しますが、注目すべきは「オンライン」が主語だということ。英語のほうが、このことがわかりやすいですね。OMOが、デジタル=オンラインの側からものごとを見る「After Digitalの考え方」だということがよくわかります。

O2OとOMOの違いは、視点の違いだけではありません。O2Oは、オンラインとオフラインを別々にとらえて、間を行き来させる方法を考えるモデルでした。でも、OMOはオンラインとオフラインが1つになっちゃう、というモデルなんです。そのときの軸足は、オンライン側。オンラインの世界のルールでオフラインのことも考えて、オンとかオフとか区別せずに、トータルでサービスを考えよう、というのがOMOのキモです。

OMOの考え方で、サービスは企業中心から顧客中心の設計に変わる

あなたは普段の生活で、オンラインとかオフラインってどのくらい意識しますか?ほとんどの人はそんなこと意識しないで、使いやすいものを使いやすいように使っているだけだと思います。いつもは重たいからお米はネット注文して届けてもらってるけど、今日は車で買い物に来てるから買って帰っちゃおう、なんてこと、ありますよね。

そのときに、同じお店なのに、ネットショップで貯めたポイントが店舗では使えないって言われたら、なんだかちょっと納得いかないのでは?でも、今まではこういうの、ありがちでした。その理由もよくよく聞いたら、企業の中で店舗を担当している部署とネットショップを担当している部署が違うから、とか。これって完全に、企業中心ですよね。

でも、それじゃ良くないよね、っていうお客様中心の考え方と、いろいろな計測技術の発達のおかげでリアルの行動もデータ化できるようになってきたっていう時代の流れが結びついて、OMOというモデルが広がってきているんです。ちなみに、なんでもデータ化できる時代の流れのことを「デジタルオーバーラッピング」なんて言ったりします。

ちょっと概念的な話ばかりになってしまったので、具体的な例をご紹介しましょう。

中国には「DiDi」というタクシー配車サービスがあります。利用の手順は次の通り。

  1. 専用のアプリで、目的地を入力する
  2. 近くにいるドライバーが「私がいきます!」と応答してくれる(ドライバー情報には車種やナンバーだけでなく、ユーザからの評価が表示されている。もしそのドライバーに来てほしくなければキャンセルもできる)
  3. 自分の現在地はGPSでドライバーに伝わっているので、待っていればタクシーが来てくれる
  4. アプリには予めモバイルペイメントやクレジットカードの情報が入っているので、目的地についたら、ただ降りるだけ
  5. 車を降りると今の乗車体験に関するアンケートが届くので、入力(必須ではない)
  6. (実はドライバーもお客さんのことを評価しているらしい)

乗車前にドライバーとやりとりするための、「ちょっとそこで待ってて」とか「あと何分で着く?」とかの定型文も用意されているので、中国語ができなくてもスムーズに乗車できます。英語版を使っていても、ドライバーには中国語で表示されるんですって。

しかも、です。ドライバーの評価には「安全な運転をしているか」という指標が含まれているので、急加速・急ブレーキもありません。目的地までにかかった時間も評価にかかわるので、わざと遠回りをして高い料金を請求される、なんてこともありません。

日本でも、もちろんプロ意識の高い素敵なドライバーさんもたくさんいますが、快適なタクシーに乗れるかどうかは運次第、というところ、ありますよね。ユーザの感じる「快適」が何に由来するのかちゃんと考え抜かれていて、それが一定のレベルを下回ったらすぐに改善対応できるようにサービスが設計されているのが、DiDiなんです。

改善対応のもとになるのは「データ」です。誰が、いつ、どこからどこまで、どの車に乗って、いくらかかって、評価はどうだったか。ドライバーは安全に、適切なルートで運転したか。DiDiは、これらを全部リアルタイムで計測しています。そして、評価が低かったときにはすぐに改善の手を打ちます。

あれ、なんだか日本のタクシーより、いいんじゃない…?

日本では、「おもてなし」をする方もされる方も、気持ち次第というか、感じ方次第というか…なんとなくでも一定できてしまうので、客観的な評価ってあまりやらないですよね。DiDiのユーザ評価も、1つ1つはもちろん1ユーザの主観的な判断なわけですが、それが何万件と集まれば、分析する意味のあるビッグデータになります。何が良くて、何が悪いかがわかれば、良い方向への改善もスピードアップできます。

そして、快適なサービスを受けたと思った利用者は、またDiDiを利用しますよね。そうすると、どんどんデータがたまって、どんどんリアル体験が改善されていく、っていうサイクルが回っていくわけです。

※ 写真は、DiDi車内に置いてあるお水のペットボトル。ちょっとしたことだけど、こういうの嬉しいですよね

少し前までは、「ユーザが使いやすいようにサービスを作って、利用頻度が上がるようにして、データをためて、改善につなげて」というのはオンライン特有の考え方でした。オフラインのユーザ行動は、データとして捕捉できなかったからです。そんな中、「タクシー乗車」というリアル体験をデータ化する方法を考え、アプリ使用というデジタル体験と併せてサービス設計しているのが、DiDiのビジネス上のポイント。「オンラインの世界のルールでオフラインのことも考えて、オンとかオフとか区別せずに、トータルでサービスを考えよう」というOMOのキモに、見事に当てはまっています。

中国では、こんなふうに「OMO」な考え方で成功している企業がたくさんありますが、そのご紹介はまた、別の機会に。次回は「ビジネスが変わることで、そこで働く人間や、そのサービスを受ける人間は、どう変わっていくのか」について考えたいと思います。


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