アフターデジタルを考える勉強会レポート第2回:日本企業の先進事例 – ポケットパルコとLINEヘルスケア

前回は、おもに中国平安保険の事例から、テックタッチとハイタッチをうまく使い分け、デジタルで日常的に接点をとりながら、リアルでのおもてなしのクオリティを上げることがアフターデジタルな世界で求められることだ、というお話をしました。

今回は、それを日本で実現しつつある2つの取り組みについて紹介していきます。

撮影:下玉利 尚明=タンクフル

POCKET PARCO – リアルおもてなしのためのデジタル活用

POCKET PARCOは、ファッションに関するコラムやショップからのおすすめ情報、クーポンなどをチェックできるアプリで、様々な機能を使う中でポイント(アプリ内での呼び方はコイン)を貯めることができます。

そんなPOCKET PARCOに昨年から追加されたのが、PARCO WALKING COIN。PARCOのビル内を歩くと、500歩ごとにコインがたまるという機能です。その効果をパルコ 執行役グループデジタル推進室担当の林直孝さんはこう語ります。

林さん「お客様は、お目当てのショップ1つだけに直行して、お買い物をされる間に店舗内を数百歩歩かれます。それを踏まえて、もう少し歩いていただくうちに今まで気づかなかったショップや商品に出会ってほしいという思いから作ったのがPARCO WALKING COINです。実際にこの機能を使ってくださっているお客様は、お買い回りショップ数が2倍、お買上げ金額も半年間で20~30%リフトという結果が出ているんです。」

効果が出ていることはもちろん素晴らしいことですが、このお話のポイントは滞在時間が伸びて売上につながった、ということだけではないと尾原さんは指摘します。

尾原さん「今、林さんはさらっと”買い回りショップ数”とか”お買い上げ金額”って言いましたけど、そういったデータをログとして取得する基盤がある、ということが、すごいことなんです。」

その状態を実現しているのは、画像認識やビーコンなどを組み合わせたデジタル技術。さらにその基盤を生かして、次の段階の構想も始まっているそうです。

林さん「今の例は、どちらかというとご来店いただいたときのビル内での行動に閉じた話でしたが、今後のチャレンジは、デジタルで得られた情報を活用して、もっとパーソナライズしたリアルおもてなしを実現することにあります。」

例えば、アプリにはショップスタッフが商品情報を発信するコラムがあり、ユーザは気に入った商品の情報をクリップすることができます。今はまだ各スタッフがより多くのクリップを獲得したり来店された際の接客アプローチに試行錯誤をしたりしている段階とのことですが、近い将来、今来店したユーザがどの商品をクリップしているのかがスタッフ側に即座に通知されるようになれば、ユーザとスタッフ双方にとってストレスの少ない楽しいお買い物が増えることでしょう。

LINEヘルスケア:自分の状況にあわせてユーザが最適なチャネルを選べることが理想

続いて、LINE 執行役員事業戦略室室長、兼、LINEヘルスケア代表取締役の室山真一郎さんからも最新の構想が紹介されました。

室山さん「今年のはじめに発表があった通り、LINEは医療情報提供のエムスリーと一緒にLINEヘルスケアという会社を立ち上げました。サービスのコアとなるのはオンラインの医療相談ですが、そこだけをオンライン化して、結局10分歩いて薬局に薬を取りに行く、みたいなことでは意味がないと思っているんです。」

現在の日本の法規制の下では、前回例に出した平安グッド・ドクターアプリのようにすべてをオンライン化するのは難しいそうですが、だからといって、できることがないわけではありません。

室山さん「例えば、日本では残薬問題というのがあって、要は処方された薬を全部飲みきらないケースがある、ということなんですね。その場合、耐性菌が生まれてしまう可能性などもあって、やっぱり解決していかないといけない、と。」

こういった課題意識のもと、患者に対して医師や看護師、薬剤師から服薬指導が行われますが、薬が処方された後きちんと飲み切るまでの日々の確認は必ずしも医療者が行わなくてもよい、と室山さんは続けます。

室山さん「極端な話ですが、一旦薬が処方された後、薬ちゃんと飲んでる?と確認するのは、医療者でなくてもよいわけです。もっと言えば、そもそも人間でなくて機械がリマインドしてくれればいい。そうすることで、医療者も患者さんもどちらも楽になることがたくさんあるはずなんです。」

そうは言っても、なんでもデジタル化すればいいということではありません。「交通事故に遭って骨折している人が、のんびり検索なんかするわけがない」(室山さん)ので、その時の状況にあわせて、最適なチャネルを選ぶことができる、という状態の実現を目指されているそうです。

藤井によれば、中国の成功企業の多くが同じように「もはやオンラインやオフラインは関係なく、ユーザはその時に使いたいチャネルを使うだけ。我々は、ユーザが自分の状況に合わせてチャネルを選べるような環境を整えるだけだ」という考え方を持っているそうです。

「これまでは、マーケティングといえばユーザを点で見て属性をもとにファネルにはめるのが当たり前だったけど、これからはユーザをずっと線で見続けて、デジタルやリアル、ときには電話なんかもちゃんと組み合わせて、状況にあわせたマーケティングをしていくことが大切になっていく」という尾原さんの言葉通り、アフターデジタルな世界ではユーザの”状況”を捉え、そこにターゲティングしていくこと=状況ターゲティングが重要になっていくのです。

次回は、この状況ターゲティングを徹底した結果、あのスターバックスを超える勢いで成長している中国コーヒーチェーンを例にとりながら、オフラインのない世界で生き残るために必要なことを解説していきます!

「アフターデジタルを考える勉強会レポート」
第1回:人間が本当にすべき仕事とは?
第2回:日本企業の先進事例 – ポケットパルコとLINEヘルスケア
第3回(最終回):アフターデジタルは、人間が人間らしい仕事をできる世界

 

■この勉強会のきっかけになった書籍はこちら
「アフターデジタル – オフラインのない時代に生き残る」

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