「母としてどう仕事に向き合うか」に悩んだ女性取締役がたどりついた「仕事も子育てである」という結論

前回、武井さんにインタビューした際、編集チームで喧々諤々の議論の末、ばっさりカットしたエピソードがありました。

それは、女性の働き方について。

現代の日本で女性が責任ある立場で働くということは、やりがいがある反面、とても悩みも大きいもの。数行で済ませていい話ではないと判断し、改めて武井さんと語り合いました。

今回は、割と本音トークが続きます。

武井 :言っておくけど。

田城 :はい。

武井 :キラキラしてないよ。

田城 :あ、はい(笑)。

武井 :プロフェッショナルとかソロモン流(古いな)に出てくるようなキラッキラしたエピソード、一切ないからね。

田城 :めっちゃ変なプレッシャー感じてるじゃないですか。

武井 :いや、他の会社の女性取締役とかさ、すっごいバリキャリじゃない?ああいう感じだったこと、一回もない!

田城 :ああ、睡眠時間4時間とか?

武井 :それは子供を産んだ後は実際そうだったけれども、でも産んで数週間で現場復帰とかしてないし、1年はしっかり休んだからね!もっと休みたかった。

田城 :うわあ、出産後はやっぱり睡眠時間ってそんなもんなんですね。ムリー…。

武井 :それは誰でもそう。産まれたてはね。大きくなったらちゃんと寝れるようになるから大丈夫。自分の子供はかわいいと思えるし。

田城 :でも寝れないんだ…(←睡眠時間が減るのが人生で一番苦手)

武井 :睡眠時間にだけフォーカスあてるのやめて!

田城 :武井さんって大学生のころ、完全に総合職志望でしたよね?

武井 :そうそう。周りの友達もみんな総合職志望の子ばっかりで、男性が一般職を考えないのと同じ 感じで、一般職っていう発想があんまりなかった。

田城 :それが結構面白いな、と。私が女子大だったからかもですけど、周りの子はみんな結婚とか出産とか見据えて、銀行の一般職を受けてましたからね。

武井 :田城ちゃんは?

田城 :あんまり何も考えてなかったですね。なんか結婚出産できる気しなくて、自分で稼がないと、と思って総合職でした…。

武井 :私もそうだよ!学生のころなんて、そもそも結婚出産なんてできるかどうかわからないし、できたとしたって相手の職業とか実家の場所とか転勤の有無とか、不確定要素多すぎるわ!と思って。全然イメージがわかなかったもの。

田城 :むしろ、すごい考えてるじゃないですか(笑)

武井 :まあ、そうなったらその時に考えればいいやーって思って。実際、働かないと家を追い出されるから働かないと…っていう思いのほうが強かったし、転勤も全然気にならなかったし。

田城 :それで選んだのが外資系コンサル会社って、また随分ハードなところに行きましたね。

武井 :なんか、フェアな感じがしたんだよねー。

田城 :フェア?

武井 :そう。その当時受けてた会社とか、女性はすぐに辞めちゃうんでしょー?とか面接官が普通に言ってきたんだよね。あとは日程調整していても「第一志望なら何をおいてもこちらが指定した日にくるよね?」と言われて、あらかじめ約束している予定とかすべて破棄せよっていう態度で、授業だっていうのに面接かぶせてきたりとかして、フェアな感じがしないのが嫌で。

田城 :ああー。あるあるですね。

武井 :アンダーセン(現アクセンチュア)はそんなことなくて、学生も対等な人間として扱ってくれたし、働いている先輩がすごく楽しそうに仕事について教えてくれて、そういう風土に惹かれて入社した感じかな。

田城 :入ってから、きつくなかったですか?

武井 :ほら私、体力めっちゃあるから(笑)

田城 :たしかに(笑)

武井 :いわゆる日本の伝統的な業界とか、地方の公官庁のプロジェクトとかも担当したけど、巷で言われるようなセクハラとか、女性だからって軽んじられたりとかも一切なくて。お客様も、先輩や上司も、こちらをプロとして扱ってくれるから、新人でもどうにかして成果を出さないと、って一生懸命で、普通に楽しかったね。

田城 :ここまで、女性インタビューにありがちな苦労エピソードが一切出てこない。

武井 :起業にあたっても、セクハラエピソードとか一切ないんだよ。ただ、私が鈍感すぎるからかもしれないけどね、あとちょっとでも怪しいなと思うと自分から距離を取っていた部分はある。

田城 :それでも、恵まれてましたよね。

武井 :本当にそう!アンダーセン時代のお客さんや上司や仲間もそうだし、起業してからもクライアントや仲間に恵まれてたと思う。

田城 :すごい印象に残っていることがあるんですけど。2006年に武井さんが結婚した直後位に熱海で全社合宿したじゃないですか。

武井 :そうだっけ。

田城 :朝から露天風呂で延々話してたことを覚えてるんですけど。武井さんが、子供欲しいけど、どうしようって。

武井 :思い出してきた。

田城 :武井さんでも悩むんだ、と思って。

武井 :悩むよー!そりゃ悩んだよ!

田城 :で、「後がつかえているのでさっさと産んでください」って言ったっていう(笑)

武井 :(笑)

田城 :「で、いいように制度作ってください。そしたら社員が産みやすいんで」って。

武井 :人身御供(笑)

田城 :でも、堂々と産休取って仕組みを作ってくれたから、以降、女性社員が安心して産休に入ることができるようになったので、本当に助かったんですよね。

武井 :あれはね。でもかなり悩んだんだよ。結婚した時は、家事をやれって言うような相手じゃなくて生活スタイルが変わらなかったからよかったけど、子供を持つとなるとそうもいかないじゃない?当時はまだ30人弱の小さな会社で、1人が占める責任・役割が大きくて。みんなが一生懸命頑張ってるのに個人的な希望で戦線離脱しちゃっていいのかなって。プロジェクト5本も持ってるし、本も書いているし、オフィス移転もあるし、どうしようって。

田城 :本当に体力ありますよね。

武井 :(笑) でも本当に、子供を産んで、できれば1年の育休を取得したいというのは起業家失格、取締役失格なんじゃないかってめちゃくちゃ悩んだ。

田城 :その考えが変わったのはなんでだったんですか?

武井 :それは創業メンバーからも、やりたいことあるならやったほうがいい、先例があったほうが後輩が助かるって言われたから。

田城 :みんな言ってたんだ(笑)

武井 :周りの人の理解とまなざしに助けられた感じだよね。でも、本当に自分でそう思えるようになったのは、長女が生まれた後かなあ。

田城 :何かありましたっけ。

武井 :その当時、長女を育てながら少しづつ会社の仕事を手伝ってたんだけど、ある日ぎっくり腰になっちゃって。

田城 :うわー。

武井 :それで、仕事手伝えませんすみませんって。申し訳なくて何回も頭下げて。そしたら当時の副社長に言われたんだよね。申し訳なく思う必要なんかないんだよ、これは順番なんだからって。

田城 :順番?

武井 :そう。誰にだって子育てとか介護とか本人の病気とか、そういうタイミングは来るんだ、って。そういう時に後悔してほしくない。今は武井さんが子育てする時期でしょう。なら、もっと子供が大きくなって働けるようになったら働けばいいし、その時に次の人が全力で働けない順番が来たら代わってあげればいい。そうやってみんなで順番にやればいいんだよ。せっかく組織を作ったんだから、って。その話を聞いて、ああー、確かになーって。お互い交代できるほうが人も組織も幸せなんじゃないかって、それでようやく気が楽になったんだよね。

田城 :そのおかげで、今や産休取得回数12回。男性も育児休暇を取った人が数名いますからね。

武井 :順番が組織にとって、当たり前になったよね。

田城 :さっき、育休1年も取ったし!って言ってましたが。

武井 :本当は公務員並に3年欲しかった。

田城 :復帰したくなかった(笑)

武井 :だって子供がかわいいから(笑) そばにいたかった。

田城 :取締役ということもあって、組織に引っ張り出された感がありましたよね。

武井 :保育園の慣らし保育の初日は本当につらかったなあ。長女が保育園に着いたら、離れたくない、ママ行かないでーって感じて後追い・号泣して。

田城 :おお…

武井 :保育園の先生は大丈夫大丈夫って言ってくれるんだけど、そこから会社への道のりが、もう本当につらかった…。子連れのママとすれ違ってさ…。もう罪悪感と敗北感でいっぱい。嫌がる子供を預けるなんて、私はなんてダメな母親なんだろう、オニハハだ、親失格だって。

田城 :また失格しちゃった。

武井 :また失格しちゃった(笑)

田城 :その、でも、たぶん子供は保育園に慣れたらケロっとしてたと思うんですよ。

武井 :それはそう。先生方もプロだし、本当に良い先生ばっかりで。子供が保育園で遊んでいる姿を見て、ああ、ここなら安心してお任せできるなって。年の違う子と一緒に遊ぶ経験とか、あとは場所柄、外国人の子も多くて、小さいうちから多様な環境で育つのは、子供の発達にとって本当にいいなって思えて。母親とずっと一緒に過ごすのだけが良いわけじゃないんだなって。

田城 :素敵な保育園でよかったですよね。

武井 :あと、ちょうど同じ時期に経営者ディスカッションという場があって。社長と社員がフランクに色々話し合う場に育休中に顔を出したら、社長が皆に向かって「自分たちがやっている仕事は、未来に良い社会を残すことであり、それは自分達が親の世代にしてもらってきたことと同じ。恩返しも大事だけど、自分は恩送りをやっていきたい」と説明してて。その時に「仕事も子育てだ!」とひらめいた(笑)。

田城 :ほうほう。

武井 :目の前に子供と遊んだりオムツを変えるのも子育てだけど、子供が大きくなった頃に広がる社会が、少しでも良い社会になっているように、私たちは毎日働いているわけで、そう考えたら働くことも子育てだって納得できたんだよね。だったら今目の前の子育ても、子供の未来の社会を作る仕事も、両方とも同じ比率でしっかりやろうって思えた。1日8時間は今の子育て、8時間は未来の子育て、残り8時間は寝る、というサイクルは悪くないぞと納得したら、私の場合は仕事復帰に前向きになれたよ。

田城 :で、実際問題、仕事と育児と家事の両立ってどうしてます?それこそ、巷のバリキャリのインタビューを読んだりすると、働くママは仕事60・育児95・家事95、みたいな、あれ、これ総労働時間だいぶヤバいじゃん!みたいなのが普通に載ってて。

武井 :あるある(笑)

田城 :睡眠時間も統計見ると母親は圧倒的に短いですしね。

武井 :睡眠時間にこだわるね。

田城 :いやだって、夜中2時に寝て、朝5時に起きるとか、普通に載ってるじゃないですか。

武井 :うちはさすがに5時間くらいは寝てるよー

田城 :それでも短いですよ…。

武井 :子供が寝てからじゃないとできないことがたくさんあるからね。学校の書類記入したり、仕事することもあるし。

田城 :体力もちます?

武井 :もたせるしかないよね。その分、家事はもう、徹底的に手を抜くというか。

田城 :例えば。

武井 :私の場合は、家が汚いのはムリだから掃除や片付けはちゃんとやるんだけど、それでも子供の机の上とかは自己責任で放置。あと、食事はもう、外食に頼る。週に何回かは外食しちゃう。

田城 :いいですね(笑)

武井 :そのためにスーパーやごはん屋さんが近いところに引っ越したものね。サイゼリヤ最高!みたいな。

田城 :ミラノ風ドリア(笑) 好き。

武井 :たまにさー、子持ちで働くママなのにinstagramですごいきれいなお料理作ってUPしている人いるじゃない?一回、話聞いたら「きれいに作った時だけUPしてるんだよ!」って。

田城 :毎日は上げない(笑)

武井 :上げない。 だったら汚いのもあげてよー!

田城 :モザイクつきで。

武井 :モザイクで、周りのみんなを安心させてほしい(笑)

田城 :ビービット社内に「母の会」ってありますよね?

武井 :あるある。もともとは最近ママになった社員に誘われてランチしていたのが、だんだん大きくなって、ママ社員だけじゃなく、独身の人も、これからママになりたい人も参加している感じかな。

田城 :あれってどんな話題が多いんですか?

武井 :もう、いろいろ。みんなで相談事持ち寄って、あれはどうしてる?これはどうしてる?みたいな。それで、自分の時はこうだったよーってみんなで話して、問題が解決することもあれば、解決はしないんだけど、でも自分だけじゃないんだって安心したり。

田城 :育児本じゃなくて、生の声っていうのがいいんでしょうね。

武井 :小学1年の壁っていうのがあってね。

田城 :壁?

武井 :子供が小学校に上がると女性って離職しやすいらしいよ。

田城 :!!!

武井 :小学校に上がると子供の行動範囲も広がるじゃない?それをリモートコントロールかけないといけなかったり、それに、今までは遊んでいればよかったのが、成績で測られるようになって、宿題を見るタスクが親に振られたりとか、子供も親もプレッシャー感じたりさ。

田城 :ああー…

武井 :小学校って保育園ほど手厚くないから、書類も用具も準備が大変だったりするし。急に牛乳パック持ってこいって言いだしたりするしね。ある日、子供が寝た後に連絡帳みたら「もちもの なす」と書いてあったりとか。子供寝てて「なす」が何を意味するのか、その用途は何かとか聞けないし、とりあえず慌てて閉店間際のスーパーにナス買いに行ったよね。

田城 :そういうのが積み重なって折れちゃうんですかね。

武井 :折れるというか、これまで工夫に工夫を重ねてやっと構築してきた保育園と仕事との両立生活が全てリセットになり、ゼロから組み立てないといけないというのが予想以上に負担なんだと思う。主導権を家庭ではなく学校が持つことが多くなるってことにも最初戸惑うというか。でも周りで小学校1年の壁でやめた人いないんだけどね。

田城 :いないんかい(笑)

武井 :要するにさ、不安なんだと思うんだよね。ただ、最初がどん底なだけで、あとは慣れることで必ず浮上できるから大丈夫。で、そういう話を母の会ですることで、お互いに参考にして共感して、みんながまた頑張っていけるための仕組みなんだと思う。

田城 :今は女性社員がメインみたいですけど、パパもいつか参加してくれるようになるといいですね。

武井 :本当にそうだよね!子育てを「奥さんのお手伝い」という感覚で捉えるんじゃなく、積極的に取り組むパパが増えたらいいよね。

田城 :女性の働きやすさっていう観点でいろいろ施策作ったりしてるんですけど。

武井 :リモートワークとかフローレンスの導入とかね。ありがとうね。

田城 :どう思います?なんか、病児保育も大事だけど、それだけ入れても解決しないんじゃないかって思ってて。

武井 :というと?

田城 :そもそも“女性の”働きやすさって何なんだ?って思って。

武井 :まあ、女性だけじゃなく男性もいるし、女性だって、独身とか既婚とか状態によって変わるし、そもそも色々な個性があるからね。

田城 :なので、最近は鍵は男性なのではないかと思うようになっていて。たとえば、母親が早く帰らないといけないなら、父親も早く帰らないとダメなんじゃないか?とか。

武井 :たしかに、パパが早く帰ってメイン担当としてバリバリ家事や育児やってもいいもんね。パパが早く帰るのが当たり前になれば、ママがたまに残業したりして思いっきり働くとか、飲み会にも参加できるとか、自由度が広がるよね。

田城 :そうなんですよ!

武井 :もちろん、独身だって早く帰って遊んだり勉強したりできたら、全然いいよね。

田城 :そうなんですよね。一方で、仕事って、すごく楽しくて、中毒性も高いじゃないですか。だから、ある時間は全部仕事に使いたい!っていう人も、もちろんいますよね。今は成果出したい!とか、成長したい!とか。

武井 :いるね。性別問わず、一定そういう人はいるよね。

田城 :さらに言えば、みんなで一生懸命働かないと会社がつぶれてしまうという危険性もあるわけで。

武井 :縁起でもない(笑)

田城 :(笑) 色々な人がいる中で、組織として、どうバランスを取って進めていけばいいのかなって。女性にだけ制度が集中するのも、なんか謎だなって。

武井 :うーん。病児保育は男性社員も使ってるんだよね?

田城 :むしろ、うちは男性社員のほうが利用者が多いですね。

武井 :じゃあ、女性のためだけの施策じゃないじゃん。

田城 :たしかに。性別じゃなく、“一定の状態にいる”人のための制度ですね。

武井 :そうだよね。組織として、バランスをどう取るかっていう話は、そもそも制度だけで解決する話でもないんじゃないかな。

田城 :というと。

武井 :自分の意志で仕事をやりたいときに存分にやれるための環境とかサポートは絶対に必要だと思うんだよね。その上で、私たちは一つの組織にいて、みんなで成果を出しているんだ、ということを一人ひとりが意識することが大事なんじゃないかと。

田城 :ほうほう。

武井 :さっきの副社長の話に戻るけど、仕事に集中したい時期、家庭に集中する時期、様々な時期が、みんなに順番に訪れるわけ。だから、まずはお互いにどういう時期なのか、伝えあうことが大事なんじゃないかな。言われたら理解もできるし、尊重もできるよね?

田城 :確かに。

武井 :一人ひとりが仲間の状況を理解して、ここは踏ん張りどころだ、とか、ここは任せる、とかお互いに目配せしあって働いていける風土がある、っていうのがいいんじゃないかなー、と。

田城 :制度と風土があって初めて働きやすさが生まれるってことですかね。

武井 :そうそう。社員みんなで働きやすい、働きがいがあるって思える組織にしたいよねー。

・・・

ふと気づけばフロアの中央で延々1時間以上も話していました。

武井さんがいう、「そういう時期がみんなに順番に訪れる」「自分たちは子供の未来により良い社会を残すために働いている」という話がとても印象的でした。


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