ビービットでは、ユーザ行動観察調査を完全リモートで実施しています

ビービットは2020年3月から、全てのコンサルティングプロジェクトで完全オンラインによるリモートユーザ行動観察調査を実施しています。

以前から、地方や海外の方を対象にした調査をリモートで行うことがありましたが、今後必要な場面が増えるという予測から、2020年2月から定常化に向けたテスト運用を開始。3月には全てのプロジェクトで定常的にリモートユーザ行動観察調査を実施できるようになりました。

3月中旬から4月にかけて、実際のプロジェクトで80人以上の方を対象にリモートユーザ行動観察調査を行いました。

検討段階では対面で実施するのと遜色ないレベルで調査を行えるのかと不安に思う声もありましたが、結果的に想定していたほどの欠点はなく、クライアント企業様からもご好評をいただいており、メリットも大きかったというのが実施してみての印象です。

ビービットのユーザ行動観察調査の特徴

リモートユーザ行動観察調査(以下、リモート調査)の具体的な話に入る前に、ビービットのユーザ行動観察調査の特徴についてご説明します。

ユーザの「発言」を鵜呑みにしない

どんな形であれユーザの調査を行う際に気を付けなければならないことの1つに、「ユーザは自分のニーズを正しく言語化できない」ということがあります。これはビービットの調査に限らずおこりがちなことですが、「ユーザの言ったこと」を重視してプロダクトや施策に反映してみたものの、結果に結びつかないというのはよく聞く話です。

ユーザも人間なので、プロトタイプを使いながら調査を行っているコンサルタントに忖度したり、サイトやサービスを使いこなせないと思われたくない等の意識が働いたりすることで、言葉で発することと実際の行動が異なるということが往々にして起こります。

一般的に、ユーザは自分のニーズを全て言語化することはできません。ごく稀に、本当に自分の考えや感じていることを言語化して伝えることの得意な方がいらっしゃいますが、、基本姿勢としてユーザの「言葉」だけを信用しないことを心がけています。

ユーザの「行動」を観察する

ユーザはUX(ユーザエクスペリエンス、ユーザ体験)の専門家ではないので、UXの分析ができるわけではありません。その反面、自分の「体験」に対して新鮮な反応を返してくれるので、ビービットのコンサルタントはその反応を観察し分析をしていきます。もちろんユーザ行動観察調査でも質問はしますが、言葉での回答はあくまでも参考程度に捉えます。

ビービットではサイトやプロトタイプだけでなく質問それ自体も、反応をみるための刺激物であると考えています。その刺激物に対するユーザの表情、動き、行動にこそ、ユーザの本音が現れているのです。

調査では、ユーザに自然に行動し自然に反応を返していただくため、「体験」に集中してしてもらうことが重要になります。

コンサルタントはユーザの表情や姿勢、サイトやプロトタイプを見ている時にどこで止まったか、事前に想定していたユーザの行動と実際にユーザが取った行動との違いなどを観察していきます。

ユーザに「体験」へ集中してもらうことの理想形は、「調査であることを忘れて行動する」状態です。ユーザがそのサービスなりサイトなりを使い得る状況を設定し、その中でできるだけ自然に近い行動をしてもらい、無意識で行っている行動の中に隠されたたくさんの課題のタネを拾っていきます。

リモートユーザ行動観察調査のメリット・デメリット

リモートで行うユーザ行動観察調査でも、上記で述べた「行動の観察」がしっかりとできるのか、どのようにそれを実現するかがポイントであり、意識してツールや業務フローをブラッシュアップしていきました。

ではここから、実際にリモート調査を実施してみてわかったことをまとめていきます。

事前の想定より良かった点

ユーザの様子・行動が観察しやすい

リモート調査では画面を通しての調査になるので、ノンバーバルな情報をどのように得るかという点が大きな課題でしたが、PCやスマホ画面などのユーザが手元で見る端末とユーザ自身を写す端末の2つの端末を用意いただくことで解消できました。

リモート環境だからこそ「体験」に集中してもらいやすい

ユーザが自宅にいるので「普段通り」の行動をとってもらいやすいことも、リモート調査のメリットに挙げられます。

対面調査ではユーザにサービスを自由に使っていただく場面では「私(コンサルタント)はいないと思って普段通りに使ってみてください」と伝えてユーザの視界に入らない努力をするのですが、完全に普段通りというわけにはいきません。

一方リモート調査では、同様に「私はいないと思って普段通りに使ってみてください」と伝えてコンサルタント側の音声とビデオをオフにすると、自然とユーザ1人の状態を作り出すことができるのです(通信は繋いだ状態なのでユーザの様子や音声は観察することができます)。

ユーザがリラックスしているので自然な行動を取りやすい

オフィス内にある専用の調査ルームで行う対面の調査に比べて、被験者がリラックスした状態で調査が進むのがリモート調査の大きな特徴であることもわかりました。

ユーザ行動観察調査は「ユーザが実際にサービスを使う状態になるべく近い」状況で使用してもらうのが理想です。

調査ルームでは多少なりともユーザが緊張してしまうため対面調査の場合は、インタビュールームの内装やコミュニケーションを工夫することで、ユーザにリラックスして調査に臨んでもらえるように努めています。

リモート調査の場合には、ユーザは初めから自宅にいるので、調査開始直後こそ緊張が感じられますが、調査であることを忘れて自然に行動し始めるタイミングが、対面調査に比べてとても早い傾向があります。

例えば薬に関する調査では、途中で「あ、飲むの忘れてた」と気付きその場で薬を飲む方がいたり、子供と一緒に使っていただくサービスの調査では、ユーザが子供をその場に呼んで「これはどうだったっけ」と会話を始めたりと、今まではなかなか見られなかった自然な行動が、コンサルタントがあれこれ工夫しなくても発生しています。

調査対象ユーザが圧倒的に集まりやすい

リモート調査ではビービットの調査ルームという物理的な場所まで来ていただく必要がないため、ご協力いただくユーザを一都三県に限らず全国から探すことができるようになりました。

また、対象となるサービスによってはご家族で一緒にインタビュールームにきていただくケースがあるのですが、対面調査では「家族の予定が合わなくて…」となかなか揃って調査にお越しいただけない場合があったのに対し、リモートではスムーズにご協力いただけることが多くなりました。

モニタリング側とのコミュニケーションがスムーズに

対面調査の時には、別室でモニタリングしているクライアントとリアルタイムでコミュニケーションをとることは難しかったのですが、リモート調査ではチャットツールを使うことでモニタリング側と調査側のコミュニケーションがスムーズになりました。

明らかになった課題と改善点

当初懸念していた調査の品質についてはクリアできたものの、リモートにすることで今までになかった課題も発生しました。

ユーザ側でご用意いただくものが多い

リモート調査では、対面調査と違ってユーザ側でご用意いただくものが多くあります(上で触れた複数の端末など)。この点については、20年近くビービットの調査にご協力いただいている複数のモニター収集会社さんと一緒に、ご案内のフローを整備しました。

調査前の確認に時間がかかる

リモート調査では、ユーザとの接続チェックや、事前にお伝えした調査用アプリのインストール有無と動作チェックなど、実際に調査を始める前の確認に時間をかける必要がありました。調査を行うコンサルタント側とユーザ側それぞれにマニュアルを整備し対応しています。現在は、1回あたり15分程度、各種確認の時間を作るようにしています。

プロトタイプの作り込みをより丁寧にすることが必要

プロトタイプを使用する調査においては、対面調査の場合よりもプロトタイプの丁寧な作り込みが必要です。対面調査ではリンクや挙動が未設定でも、コンサルタントがその場で画面を切り替えることで、想定する画面遷移をユーザに辿ってもらうことができます。

しかしリモート調査ではコンサルタントが画面操作を行ってしまうと、ユーザの利用行動の流れを止めてしまう度合いが高いので、ユーザが極力自由に利用できるように、リンクや挙動などをより丁寧に作る必要があります。

苦しい状況下でもクライアントの期待に応えるために

コンサルティングプロジェクトの肝となるユーザ行動観察調査をリモートで行うことには、当初社内で不安もありました。しかし、実際にやってみると不安に思っていた点は大きな問題にはならず、ユーザが自然な行動をとりやすいなどのメリットも多くありました。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う現在のような状況は、誰も予測しなかったことでした。そんな中でも、事業推進を止めないという熱意のあるクライアントがいて、そんな方々から我々にご相談をいただける。このことは、大変ありがたく、チーム一同身の引き締まる思いです。我々はその期待に応える仕事をしていかなければならないと、改めて感じています。