あえて”選ばせない”という体験をつくる -エクスペリエンスデザインの現場から

シリーズ「エクスペリエンスデザインの現場から」は、ビービットがプロジェクトの中で見つけた「ユーザが置かれている面白い状況・インサイト」をお伝えしていくシリーズです。ユーザの行動をじっくり観察し、エクスペリエンスデザイナーがハッと気づいた瞬間の知的な面白さを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。


ビービットがユーザエクスペリエンスの設計を行う時、必ず行なっているプロセスのひとつに「ユーザ行動観察調査(以下ユーザ調査)」があります。

ユーザを知ろうとする時に一般的に行われるのは、市場調査などの広く浅く行われる調査です。

それに対してビービットの行うユーザ調査は、代表的なユーザに被験者となってもらい、ヒアリングをしたりプロトタイプを使ってもらったりすることで、より深くユーザを知る手法です。

ビービットのユーザ調査は「ではこれからこのサイトで◯◯を購入してください」といったタスクベースのものではなく「あなたがこういう状況に置かれているとして、このサイトに来たらどうしますか?自由に使ってみてください」という風に、実際の利用状況に近い状態のユーザ行動を観察していきます。

選べる商材、選べない商材

さて、やり方の説明はこのくらいにして、今回は「状況によって変わる、最適な商品選び体験」というインサイトをご紹介します。

タイヤ販売サイトの調査を行った時のことです。

通常ECサイトでは、商品一覧にたくさんの商品を並べて、UIを見やすく整えるとCVRが向上するというのが常識です。そのため、クライアント企業の担当者もビービットのコンサルタントも「どうやったらタイヤが選びやすくなるか」を考えて改善案を作っていました。

ところが調査でユーザを観察していると、比較しやすく作成したはずの一覧を見てユーザが進めなくなったり、絞り込み検索などで入力条件を出せば出すほど選べなくなっていく、という様子がみられました。

ユーザへのヒアリングでわかった理由には、タイヤという商品の特性が関係していました。タイヤはユーザにとって選ぶのが楽しくない、条件が難しくて選べない商品なのです。

タイヤの場合、変形率や扁径率、リムなどの条件を出されても、多くのユーザはハテナマークが頭に浮かぶだけでどう選んだらいいかわかりません。

なおかつ、きちんと選ばなければという気負いと、選んでいても楽しくない、という要素が加わり「タイヤを選べない」という状態に陥っていました。

こういった状態は、大事だとわかっているけど判断基準が多く選ぶことが難しい、選ぶことが楽しくない商品(例えば保険など)で起こります。

選べない人にどう選んでもらうか

このタイヤ販売サイトではユーザ調査の結果を踏まえて、当初の仮説であった「選びやすくする」とは真逆の「ユーザに選ばせない」設計を行いました。

具体的には、タイヤの条件を選ばせるのではなく、車の利用状況や頻度など、ユーザが調べたり考えたりしなくても答えられるような質問を設けることで、ユーザに合ったタイヤが導き出されるようにしたのです。この改善によってCVRは最終的に1.5倍になりました。

ちなみに、反対に条件を出して選ばせたほうがCVRがあがる代表的なものが「フィギュア」や「ミリタリーグッズ」などのホビー系商品です。

こちらは選ぶこと自体が楽しいため、情報を多く出すこと、見やすくすること、選びやすくすることなどの商品選びの体験を変えることで売り上げが伸びることがあります。逆に、一定以上の商品数を見ないとユーザが満足せず、離脱につながってしまうことさえあります。

放置された不自然さの発見

作り手(企業の担当者やエクスペリエンスデザインを行う人間)は、どうしてもサービスやサイトに詳しいので、無意識のうちにユーザも同じくらい詳しいと思い込んでしまいがちです。それを避けるためには、フラットにユーザを観察することが重要です。

このように固定観念を一度全て捨てて行動観察をすると、今までの視点では見えなかった課題やひっかかりが見えてきます。わたしたちはそれを「気づかれていない違和感の発見」または「放置されている不自然さの発見」と呼んでいます。

ユーザエクスペリエンスを設計する際は、自分には思い込みがあるということを忘れずに、意図的にそれを外すように気をつけています。

 


顧客の行動という「事実」から物事を見ることは、すなわち世界に逆方向から光を当てることであり、視点を転換して見る新たな景色には、知的な面白味があふれています。記事を読んでいただいた皆さまに、エクスペリエンスデザインという仕事の醍醐味が伝われば幸いです。

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