アドテック東京2018トークセッション実施レポート -データドリブン体質になるための戦略と組織

10月5日(金)に開催された、弊社エバンジェリストの宮坂がモデレータを務めたアドテック東京2018でのトークセッション、今日はそのレポートをお届けします!

【登壇セッション】 E-5 データドリブン体質になるための戦略と組織
【日時】 2018/10/5 12:50 – 13:40
【開催場所】 東京国際フォーラム
【登壇者情報】
モデレータ:株式会社ビービット エグゼクティブマネージャ/エバンジェリスト 宮坂 祐
スピーカー:株式会社フェリシモ 定期便MC統括グループ 部長 橋本 和也 様
スピーカー:株式会社ユー・エス・ジェイ マネージャー 柿丸 繁 様
スピーカー:株式会社電通 メディアプランニング部 部長 西田 悟史 様
スピーカー:株式会社ユーキャン ウェブマーケティング部 次長 鳥羽 渉 様

イベント参加者からのアンケートでも、全56の公式セッション中11位、個人スピーカーとしても237人中 鳥羽様が11位、柿丸様が12位という大人気セッション。それでは、当日の内容をダイジェスト版でご紹介していきます。

テーマ1:データがあぶり出す「真実」とは?

宮坂:1つ目のテーマは「データがあぶり出す真実」ということで、はじめにデータを丁寧に紐解いていくことで、「不都合な真実」というほどではないとしても「意外な事実」が見えてきた、というお話を伺っていきたいと思います。まずは柿丸様から、お願いします。

USJ 柿丸様(以下、柿丸様):USJでは、パーク内で地磁気とアプリを利用したゲストの位置情報把握を実施しています。

そのデータを、”リピートしてくれる人はどんなパーク体験をしているのか”という逆引きのアプローチで見ていくと、人気のあるエリアが実はリピートにはつながっていなかったり、一見地味であまり注目されていないようなライドが強いリピート力を持っていたり、といったことがわかってきました。

宮坂:なるほど。こういった話はECでもありそうかなと思うのですが、橋本様、鳥羽様のところではいかがでしょうか。

フェリシモ 橋本様(以下、橋本様):そうですね、柿丸さんのお話とかなり近い話があって、フェリシモの場合ですと、新規獲得が伸びている商品をよく見てみると実はリピーターには全く購入されていないですとか、逆に、ロイヤルカスタマーの方が最初に出会った商品を十分にプロモーションできていない、という事実がデータによって明らかになりました。

ユーキャン 鳥羽様(以下、鳥羽様):ユーキャンでも、ちゃんとデータを観ていくと意外な発見や、見落としていたポイントが見つかることが結構ありますね。

宮坂:こういったことが発見できるというのはビジネス的にはとても有用なデータの活用方法だと思いますが、西田様の目から見ると、どういったところが”うまくいくポイント”なのでしょうか?

電通 西田様(以下、西田様):意味ある発見をするためには精度の高い自社サービスの利用データがあることが前提で、そこに必要なデータをかけ合わせていく、あるいはビジネス指標から逆引きしていく、というプロセスが必要です。皆さんはそういった分析の方法論をお持ちなんだと思います。

私はお客様から”どのソリューションがいいのか”というご質問をいただくことが多いのですが、実はデータを有効活用するためにはソリューションとデータの設計を一緒に考えることが非常に大切です。

柿丸様:最初から捨てるデータと集めるデータを意識して取り組む、という感じですよね。

西田様:おっしゃる通りです。適材適所でデータを使い分けないと、データが腐ってしまうんです。大量のデータがあれば様々な分析ができるようになりますが、統計的に意味のないオーバーフィッティングになってしまうケースもありますから。

宮坂:なるほど、ビジネスとしてどういった課題を解決したいのか、それに対してどういったデータが必要なのかを捉え、分析もKPIやKGIから逆引きして行うことがデータ活用の鍵、ということですね。

 

テーマ2:データを有効活用していくための処方箋とは?

宮坂:先程お話のあったような「不都合な真実」は、社内に伝えていくときにハレーションを起こさないのでしょうか?

柿丸様:僕は、不都合に見えるものが出てきたときには”都合の良い”提案を一緒にするようにしています。

橋本様:僕のいるデータ分析部門が企画部門に報告するときにも、不都合な真実は伸びしろと捉え、”課題を見つけたので一緒に伸ばしませんか?”という形で持っていくように気をつけています。そうするとどちらが悪いという話になりにくいですし、そのあとも分析結果に耳を傾けてもらいやすくなりますよ。

宮坂:ネガティブサイドをあげつらうのではなく、ポジティブサイドも見せて上手に巻き込んでいく、ということですね。

ところで、こういった課題や改善点を見つけるためにはデータを扱うツールが必要だと思うんですが、皆様の会社ではトップダウンとボトムアップ、どちらのアプローチでデータ活用の道具立てをしているのでしょうか?

鳥羽様:私の所属部署はシステム部門ではなくマーケティング部門なので、その時々に必要なものを、必要性を証明しながら都度導入していく、というスタンスですね。

橋本様:僕のところも基本的には都度なのですが、保守期限切れのような外圧の文脈があるときは新しいものを入れるチャンスですね。

柿丸様:僕は若干アプローチが違っていて、基本的にはボトムアップなんですが、最後にはトップダウンの力を借りるようにしています。最初からトップダウンで、というのは幻想に過ぎない思いますし、かといって全てをボトムアップで進めてしまうと相当うまくやらない限りただのパッチワークになってしまいますから。

宮坂:ありがとうございます。確かに、そういう難しさはありますね。

さて次に、”集めたデータを使って、いかにお客様を理解し手をうっていくか”というお話を伺っていきたいと思います。まず鳥羽様から、いかがでしょうか。

鳥羽様:ユーキャンでは学習モチベーションをもとに”トライブ”と呼ばれるユーザのセグメンテーションを設定しています。2017年はトライブを15種類設定していました。

具体的にやっていたことをご説明すると、まずマス広告への反応とその後のウェブ行動を追いかけて、このトライブの人はこういう行動をとる、ということを見極めます。そして、その結果をマス広告にフィードバック、サイトもトライブごとにコンテンツを出し分けていました。

西田様:セグメントが15種類というと、かなり多いように思いますが…?

鳥羽様:はい、一定の効果は出たのですが、正直に申し上げれば、トライブに当てはめていくのが難しかったり、それぞれのパイが小さくなってしまったり、という反省がありました。そこで2018年にはトライブを8種類に再整理、さらなる成果向上につながりました。

橋本様:分類を多くすれば効率は上がったように見えるけれど、ボリュームが足りなくなっていく、というのはよくある話ですね。

西田様:結局、”売上に対してどれだけのインパクトがあるのか”というのは、集計データで見るしかありません。

一方で、非集計データでしかわからないこともあります。例えばサイト上のユーザ一人ひとりの行動データを見なければ、ECで商品を購入している人の本当のジャーニーはわかりませんからね。

宮坂:非集計データによる日々のスモールPDCAと集計データによるラージPDCAの往復が重要、ということですね。

ここまではユーザを理解して、それに合わせてコミュニケーションをとる、という方向のデータ活用のお話でしたが、ここで”ユーザとデータをシェアする”という全く新しいデータ活用のアプローチを柿丸様にご紹介いただきたいと思います。

柿丸様:今年のハロウィーン期間中、USJのパーク内には”ゾンビ”が登場していました。アプリを起動して近づくと、ARでゾンビとバトルができる仕掛けです。そのゾンビのうち何体かはGPSで位置情報を発信している”スーパーゾンビ”で、パーク内のどこにいるのかアプリを通して確認できるようになっていました。

アプリ利用者にゾンビを見つけて倒そうというゲーム性のある仕掛けを講じたところ、非常に好評でした。

宮坂:ゲストはゾンビを探して園内を移動するわけですよね。これを園内の混雑平準化にも活かしていると聞いたのですが。

柿丸様:はい、実際に比較的すいているエリアにスーパーゾンビを配置し、ゲスト自身に追いかけてもらうことで混雑具合を調整するトライアルをしました。混雑はゲストの満足度に大きく関わるポイントで、リピートにも影響します。

トライアルの結果、ゲストのリアル行動分析を通して、ゲームを利用してくれたゲストの多くがすいているエリアへ移動をしてくれたことが分かりました。パーク内の理想的な分布状態を作り出すための有効な手段になる、という手応えをつかんでいます。

宮坂:意外とゲストは動いてくれるものなんですね。

柿丸様:体験が楽しい、という文脈作りが何より重要なんだと思います。ただゾンビを動かしてマップに表示するだけではなく、リアルのゾンビを探して捕まえる、というストーリー性を持たせてRPG的に楽しんでもらえるように工夫をしていた。自然な文脈ですいているエリアへ誘導することができたのだと捉えています。

西田様:データを使ってエクスペリエンスを向上させていて、ビジネス的にもwin-winになっている、というのが素晴らしいですね。

テーマ3:データドリブンな組織をどう創りあげる?

宮坂:それでは最後に、これまでお話してきたようなデータドリブンを実践するための組織をどのように創りあげていくのか、ということについて伺いたいと思います。

まず、縦割り組織を横の組織に変えていくというお話を、鳥羽様からお願いします。

鳥羽様:私のいるウェブマーケティング部はもともと、認知系広告、コンテンツ運用、サイト管理といったチャネルごとの縦割り組織になっていました。そこを今年から、顧客セグメントごとに動く形に変更をしたのです。

縦割りをなくすことで、集客から獲得まで、正しいターゲットに正しい施策を届けることが狙いです。

宮坂:顧客軸で一気通貫に物事をとらえることで、よりお客様に寄り添いやすい体制を整えているわけですね。

橋本様も、部門横断の取り組みをされていると伺いました。

橋本様:僕が入社した頃のデータ分析部門は、集計・分析などの作業をすることがデータドリブンだ、という文化でした。社内のあらゆるフォルダに僕が”野良エクセル”と呼んでいる独自定義の資料があふれていて、打ち合わせの時間は”どのデータが正しいのか”という議論に費やされる、という非効率な状況です。

集計や分析が得意な人しかデータに触らなくなってしまっていた当時の状況を打開し、商品や体験の企画をする人に必要なデータを提供できるようにしていく過程で気付いたのは、データを加工する人とデータを見る人をきちんとつなぐと事業リフトができる、ということです。

例えば、フェリシモのデータ分析チームは大半が男性で、以前は多種多様なスカートもすべて一括りに”スカート”として売上データを集計していました。商品の企画意図がわからないデータ分析チームにとっては仕方ないこととはいえ、これでは企画チームにとってピンとこないデータしか出てきません。

そこでより詳細な売上データを企画チームに持っていったところ、”今年は流行の膝丈が変わったので、丈が何cmのものが売れている”という、本当に売上につながる発見が出てきたのです。データの解釈が全く異なるので驚きました。この気づきの後に、再度データを加工するチームで量的な裏付けをとることをしました。

それ以来フェリシモでは、”見たあとにどのようなアクションを期待するデータ提供なのか”を基準に、データ共有のフォーマットを設計するようにしています。ここを意識することで、加工する人だけのものだったデータが、現場で企画をする人が本当に使えるものに変わるんです。企画チームの気づきに対して量的な裏付けをとるのは、スカートの例のときと同様です。

宮坂:大切なのは、データを一部の人だけでなく、事業課題がわかっていて、商品に愛のある人が活用できる状態にするということですね。

それでは最後に、そういった状態をつくる、つまりデータドリブンを推進するための人材はどのように作るのか、というお話をしたいと思います。

データドリブンを推進するためには、マーケティング、IT、データ集計、統計などを全て理解している必要がある、と言われることもありますが、そんな天才はなかなかいませんよね。皆様、どう思われますか?

西田様:難しいとは思いますが、目指さなければいけないという側面もあると思います。様々な組織を変えていく中心人物に各領域への理解がなければ、どこにどういうデータを貯めてどう活用するかをオーケストレーションできないのではないでしょうか。

わからない領域のことは丸投げする、では、なかなかコラボレーションは進みません。ある程度の周辺知識を持ってオーケストレーションできる人がいる上で、一緒に協業していくということが、データドリブンな組織を作る上で大切なことではないでしょうか。

柿丸様:僕自身、データについてはひとつも専門領域はありませんが、広く薄くわかっていることが良い作用をしているのかもしれません。自分のケイパビリティが活きるとわかれば、それぞれのスペシャリストもわくわくできると思うので、そのようにタスクフォースを組んでオーケストレーションすることが大切かなと思います。

宮坂:データドリブンとは、特殊な専門家が実施するものではなく組織で回していくものだということ、そしてそれがKPIやKGIにきちんと紐付いていて、適切なデータがオーバーフィッティングでなく利活用されている状態を指すのだというのが、本日のまとめになるかと思います。ご登壇の皆様に盛大な拍手を、ご清聴ありがとうございました!


大好評だった本セッション、ビービットでは当日と同じご登壇者様をお招きして、自社セミナーの開催を予定しています。詳細が決まりましたらこちらのブログでも随時お知らせしてまいりますので、ぜひこの熱いトークを生で聞きにいらしてください。

また、ビービットではデータの専門家でなくても簡単にユーザの行動データを見ることができるサービス「モーメント分析クラウド ユーザグラム」を提供しています。データ活用をお考えの方は、下記リンクよりぜひ詳細をご覧ください。

モーメント分析クラウド ユーザグラム(Usergram)
行動データを活用した企画がデータドリブン・マーケティング成功の鍵!

モーメント分析クラウド ユーザグラム(Usergram)は、顧客のモーメント(その瞬間の行動)をデータとして抽出/可視化でき、その行動の目的や、背景にある状況を把握し、マーケティング施策の企画立案に活かせるクラウドサービスです。

このライターが書いた記事

このライターが書いた記事をもっと見る

関連する記事